最終審査会・表彰式

9月23日(月・祝)に日本マイクロソフト株式会社品川本社にて、「Minecraftカップ2019全国大会」最終審査会・表彰式が開催されました。今回初めて開催された本大会には133チームの応募があり、Minecraft:Education Edition を使って、全国各地の子供たちが、或いはチームによっては海外子女の仲間と協力して、夢のある未来の街を創作しました。被災経験や不登校、院内教育といった困難な状況にある子供たちのチームもありました。しかしそれぞれに地元愛の伝わる作品や、インクルーシブ社会の実現に繋がるテーマ性のある作品など、大人の想像をはるかに超える、創造力豊かな作品を完成しました。

その中から一次審査を通過した8チーム、本大会の審査員・アドバイザー、協力団体が会場に参集しました。

まず運営委員長の鈴木寛先生(東京大学教授、慶応義塾大学教授)、運営委員の赤堀侃司先生(日本教育情報化振興会 /JAPET&CEC・ICT Connect 21会長、東京工業大学名誉教授)によって、今回の大会の経緯と、Minecraft:Education Editionを通じて、子供たちが自らの手による地域創りを考えるきっかけになったこと。教室の壁を越えて、地域・家庭・学校による教育連携に繋がる可能性について話しました。子供たちが楽しく学び、地域の歴史について調べていた様子。自分たちが創るからこそ、あらゆる建物が自分事になっていった過程については、多くの作品創りのエピソードの中でも語られています。

その後、大会のキックオフから本日に至るまで、全国3万の小中学校への情報提供や、不登校や院内教育、外国語ルーツの子供たち等、特別支援拠点における支援活動の内容について、振り返りが行われました。

特別支援拠点の6団体に対しては、日本マイクロソフト株式会社品川本社に集まってのコーチ養成講座や、2011年東日本大震災の被災地を支援する目的で行われた釜石復興スタジアムでのイベント、陸前高田市におけるワークショップが実施されています。

岩手県釜石市の釜石鵜住居復興スタジアムにて7月に行われたワークショップには、近隣の大槌町、大船渡市や陸前高田市からも子供たちが駆けつけ、中でも陸前高田市の子供たちは、一般社団法人Save Takataのもとで陸前高田市復興のシンボルである一本松をモチーフにした作品を完成させて、「Minecraftカップ2019全国大会」に参加しています。この活動には、ユニバーサル志縁センターを通じて、Minecraftに詳しい大学生(軍艦島を再現した慶應SFC在学の学生さん)や、日本マイクロソフトの社員ボランティアも遠隔でのメンタリングや実際に陸前高田市に訪問することを通じて支援に携わりました。

続いて、各チームの発表が始まりました。それぞれの発表では、「3分間のワールド紹介」・「PowerPointを用いた3分間のプレゼンテーション」・「審査員のコメント」の順に行われていきます。どのチームも堂々とプレゼンテーションを行い、発表の勢いに押され審査員のコメントにも熱が入りました。 以下ワールドと共にご紹介いたします。

◇祝!世界遺産ユニバーサル&グローバルスポーツJAPAN

加藤学園暁秀初等学校サンシャイン WHITE6(加藤学園暁秀初等学校)・17 名・静岡県

初心者から経験者まで、スキルの異なる17名が力を合わせて作品創りに取り組みました。富士山頂上でのクールダウン、日本文化遺産に指定されている仁徳天皇陵(前方後円墳)ではカヌー競技やマラソン競技を行うなど、合計26スポーツ施設のある大きなワールドが完成しました。

日本語と英語で案内をするエージェントや、レッドストーン回路を使用して、障碍があっても自由に動けるよう自動ドア、エレベータを工夫するなど、インクルーシブな競技場を想像力豊かにまとめ上げています。

17名という大人数でありながら、チームメンバーの特性を把握し、得意な子が不得意な子をカバーできる役割分担によって試行錯誤を繰り返し、オリジナルのシステムを作成。「みんなの頑張った点を称え合い、そのことによって失敗を気にしなくなった」というプレゼンテーションが印象的でした。

◇Kai’ s World

Souya channel(山形県立東桜学館高等学校・東根市立東根小学校)・16 名・山形県

小学生と高校生の混合チームでした。自分たちの地元にある大ケヤキを中心に街を構成し、大ケヤキの神秘性を表現するために宇宙とつなげました。地元のJリーグチームのモチーフを競技場の電光掲示板に使用するなど、自分たちの日常の延長にワールドが作られていて地元への愛がとても感じられます。

大きなワールドとなったため、プログラミングを必然的に多用することでプログラミングそのものへの理解が深まり、また、小学生との協働の中で互いに学びを得ることもできたそうです。

王立英国建築家協会名誉フェロー建築家の髙崎正治先生は、「他のチームと少し違う視点で見ているところが印象的。未完成のところにさえも(ここには何を想像して創る事が出来るだろう、と)非常に可能性を感じるチームでした」と評価しました。

◇私たちのスポーツアイランド

CoderDojo 宜野湾(CoderDojo 宜野湾)・12 名・沖縄県

甲子園野球が大好きなメンバーの野球愛からハート形の野球場を作ることから始まったワールド創りでした。地元にある施設を活かし文化も表現していました。特にこだわったという首里城は、実際の建築物の大きさと、Minecraftブロックの寸法を緻密に計算して外観を再現し、武道場として置かれていました。そして車いすの方も安心して過ごせる工夫を島全体に施す等、バリアフリーへの配慮も優れた作品でした。

一緒に作業できないメンバーに対して、ワールド内に案内板を設置してコミュニケーションを取る「申し送り事項」の工夫等、楽しみながら取り組んだことが感じられ、「(案内板を使った)コミュニケーションの取り方、(首里城の寸法でインターネットではわからなかった部分は首里城案内マップを見ながら作ったという)情報収集へのこだわりが印象的」と教育ITライターの神谷加代さんから評価されました。

◇【AI ロボットが作る】バリアフリーで全ての人が暮らしやすくなる?全ての人が暮らしやすい街を考える街

バタフライ エフェクト(放課後等デイサービス BUTTERFLY EFFECT)・7名・埼玉県

コーチも含むメンバー全員が発達障碍をもったチームでした。コーチは伴走に徹して、子供たちの力だけでストーリーを完成。それぞれのステージにおいて、様々な障碍のテーマ(目が見えなくなる、思うように動けなくなる等)を持たせていました。「助けるのではなく、助け合うことが大切」という他者への共感・助け合いの気持ち(=心のバリアフリー)をもてる世界を実現したい気持ちが伝わってきました。

RPG風にするための膨大な回路を埋め込む工夫や問題動作の検証などにもあきらめずに取り組んでいます。 Minecraft公式プロマインクラフター・マイクロソフト認定教育イノベーター(MIEE) タツナミ シュウイチさんは「それぞれのステージにおいて“障碍”をテーマにMinecraft: Education Editionの基本的なエフェクトを使うことで、大切なテーマを経験することのできるワールドが完成した」と評価。運営委員長の鈴木寛先生は「世の中の矛盾を受け入れ、助け合って、心のバリアフリーを実現する。そのストーリーに感動しました」とコメントしました。

◇Code Tropolis(コードトロポリス)

Coding Lab Japan(Coding Lab)・19 名・東京都

シンガポールと日本に住む子供たちの混合チームです。複雑な構造の近未来的なドームやビルなどほぼ全ての建物がプログラミングによって作られていることにまず驚かされます。そのプログラミングを実行するために、テストエリアで多くの試行錯誤が重ねられていました。また、牢獄、脱出ゲームには閉じ込められるしくみも作られており様々なアイディアの盛り込まれた作品となっています。

遠く離れた場所に住んでいる子供たちが協力してひとつの建物を作り上げることや、様々なプログラミングを試した(Azureを活用してサーバーをたてる工夫をスタッフの方が行いました)ことにより、Minecraft: Education Editionを通じて誰かと協働作業に取り組み、プログラミングが「楽しい、もっとやりたい!」と感じるきっかけとなったようでした。

離れた場所に居ながら、チーム一丸となりコミュニケーション取りながら全体イメージを完成したことが、審査員の先生方から高く評価されました。

◇豆腐から始める理想の島計画

UNIX研究同好会(東京都立三鷹中等教育学校)・7名・東京都

同じ同好会に所属する中高生のチームが披露した、3分間のワールド紹介の動画は会場から笑いを誘い、「一番Youtuberっぽかった」と動画クリエイターのKazuさんも共感。

ワールド内のメイン施設となるスタジアムは、ラグビーとサッカーの2つの競技場が一体化しており、コートが切り替わるしくみです。その結果、回路が大規模となり「沢山のピストンとコマンドブロックによって構成されている“切り替えコート”には苦労がありましたが、システム担当の人たち中心に完成させることができました!」と笑顔でプレゼンしてくれました。

「ラグビー場とサッカー場が瞬時に変わる。もし実現すればスタジアムが不足する日本において夢のようなこと」とプロフェッショナルラグビーコーチの大西一平さんも感激を露わに表現しました。

◇とある南の島~海の恵みと共に暮らす人々の伝統芸能とスポーツ

CoderDojo Ishigaki(CoderDojo Ishigaki)・6名・沖縄県

「たくさんの仲間と楽しさを分かち合いたい!」を原動力に、今年3月に立ち上がったばかりのCoderDojoです。多年齢にわたったチームが助け合い、きれいな海をテーマにした小さい子のアイディアを形にし、自宅にパソコンが無いメンバーも集まる場を設けることで作品創りに関わることができました。

海上や海中を見ながら走れるマラソンコースのアイディアや、自分たちの暮らす島の伝統や歴史、美しい自然環境なども良く調べられており、なにより、「自分たちの島が大好き!」という想いが伝わってくる元気なプレゼンテーションでした。

「自然に生成された地形の上で作品創りをすることは難しいが、自然を壊さず、共存して生きていく姿勢が大切。自然と伝統芸能のバランスも素晴らしい」と建築家ならではの優しい視座から髙崎先生は評価しました。

◇Minecraft Sports Town

CoderDojo 久留米(CoderDojo 久留米)・3名・福岡県

3人という少人数チームのため、効率化を図るプログラミングが必須となり、そのことを通じて上手にワールドを構築しています。見た目を美しくするために回路を隠すなど、かなり高度のプログラムを必要とする箇所にもあきらめず、自然との共存や、見た目を美しくすることへのこだわりが見えます。

「街づくりとは、目に見えているところは勿論のこと、電気ガス水道や、情報ファイバー等、“見えない”ところも含めて、全てが街づくり。目に見えない、でもとても重要なインフラにこだわっているところ、且つ丁寧にきれいに作られているところが素晴らしかった」と運営委員長の鈴木寛先生より評価しました。

審査結果の発表前、アドバイザーのICT CONNECT 21会長の赤堀侃司様、全国子どもの貧困・教育支援団体協議会代表幹事の青砥恭様、世界最高齢プログラマーの若宮正子様からの講評がありました。

赤堀様は、子供たちが色々なコンセプトをもって自由に発想している点、技術力の高さ、そしてプレゼン力について。

青砥様からは、全国に20万人、30万人といる生活が苦しい子供たちとも、同じ「仲間」として地域の未来、将来の夢を共に育めるよう作品創りを続けてもらいたい( 注)、という温かいメッセージを。

注:今回「Minecraftカップ2019全国大会」は、青砥様が代表を務める、全国子どもの貧困・教育支援団体協議会と特別支援拠点のサポートを連携しています。

そして、若宮様は、133作品すべての作品をご覧になられた結果、それぞれのチームが一つの作品を協働して創り上げていること、又、全ての子供たちが、自分たちの町を大切に思って作品創りをしている点に対して、高く評価しました。

どの作品も、出場者の住む地域の市長・町長に御覧いただきたい、質の高い内容の作品であることは、若宮様のみならず、多くの審査員・アドバイザーも口を揃えていました。

審査を終えた審査員によるパネルディスカッション形式の総評では、建築家・プロスポーツ・教育者・プロマインクラフター・YouTuberなど審査員のそれぞれの観点で審査が行われたことが伝わります。

そしていよいよ審査結果の発表です。

それぞれ作品を以下の3つの観点から評価していきました。

  • どれほど多様な人々が充実した暮らしができるか
  • 協働作業の利点が生かせているか
  • プログラミングやレッドストーンが活用されているか

どの作品もレベルが高く、ピア・ボーティングの結果と、又、一人一人の審査員が大切に考えるべきという点について評価が行われました。

◇ALL AS ONE 大西賞(大西一平審査員賞):CoderDojo 宜野湾

「みんなが繋がる、一緒に生きていくことが大切。チームワークで繋がってくれたことが嬉しい」

プロフェッショナルラグビーコーチ 大西一平

◇ピア・ボーディング Kazu賞(Kazu審査員賞):CoderDojo Ishigaki

「僕もすごく住みたい島、とても行きたくなりました」 動画クリエイター Kazu

◇クリエイティブ アイデア賞(神谷加代審査員賞):UNIX研究同好会

「アイディアも作品の細かな工夫も素晴らしかった。学校教育の現場において今後、中高生が小学生を引っ張っていってもらいたい」 教育ITライター 神谷加代

◇街づくり すずかん賞(鈴木寛審査員賞):Souya channel

「市民・町の人にとって誇りであるけやきの木を大切な軸として、宇宙に広がっていく街づくりの哲学がすばらしかった」 東京大学教授、慶應義塾大学教授 鈴木寛

◇Best Coding賞(タツナミシュウイチ審査員賞):Coding Lab Japan

「精度の高いプログラムを組み、何度も何度もやり直して良い作品に高めていった点が印象的」Minecraft公式プロマインクラフター・マイクロソフト認定教育イノベーター(MIEE)タツナミ シュウイチ

◇物人賞(髙崎正治審査員賞):CoderDojo久留米

「今後彼らは、日本や世界で活躍する建築家、地域プラナーになってくれるのではないか。その手段を今回手に入れたのだと思う。日本・そして世界にその足跡を刻んでください」 王立英国建築家協会名誉フェロー建築家 髙崎正治

◇日本マイクロソフト賞:バタフライ エフェクト

「地理的・社会的・経済的な制約があっても全ての子供たちに参加できる大会を目指していた。“共感しあう”というインクルーシブ社会の原点のワールドを創って下さって有難う」 日本マイクロソフト株式会社 社会貢献担当部長 龍治玲奈

最後に審査員全員によって大賞がひとつ選定されました

◇Minecraftカップ2019大賞:加藤学園暁秀初等学校 サンシャインWHITE6

「市民の皆様が色々なスポーツを身近に触れられるように、プログラミングもしっかり使って、3つの評価軸をしっかり徹底してくれた。歴史や地理も総合的に勉強してくださった」 Minecraftカップ 2019 全国大会運営委員会 運営委員長 鈴木寛

受賞コメント:「17名で作品に取り組めたこと。一生に一度の経験を感謝しています。チームのみんなと喜びを分かち合いたいです」

チーム プレゼンター
大賞 大賞 加藤学園暁秀初等学校 サンシャインWHITE6 鈴木寛
審査員賞 ALL AS ONE 大西賞 CoderDojo 宜野湾 大西一平
ピア・ボーディング Kazu賞 CoderDojo Ishigaki Kazu
クリエイティブ アイデア賞 UNIX研究同好会 神谷加代
街づくり すずかん賞 Souya channel 鈴木寛
Best Coding賞 Coding Lab Japan タツナミシュウイチ
物人賞 CoderDojo久留米 髙崎正治
日本マイクロソフト賞 日本マイクロソフト賞 バタフライ エフェクト 日本マイクロソフト株式会社

最後は池本修悟事務局長の大会全体を振り返り、「本物は続く。続ければ本物になる。今回Minecraftカップ2019全国大会を通じて、ひとりではできないこともチームだからできることができた。この経験は人生の宝ものになる」と、参加した子供たち・そしてコーチをはじめとする指導者の労をねぎらい、大会は閉会となりました。

本大会を通じて、子供たちが自らの住む地域に対して、自分事として捉えながら未来の街づくりを想像し、お互い役割分担をしつつコミュニケーションを工夫しながら、探求心をもって積極的に作品創りを行った様子が伺えました。又、通常「届き辛い」と言われる子供たちも、必要な環境整備を行い、多様な大人たちの理解や応援があることで、人の心を動かすことのできる素晴らしい作品創りに取り組めることも目の当たりに出来ました。今回、ユニバーサル志縁センター・ICT Connect 21という二団体のNPOとマイクロソフトという企業の連携を中心に支援の仕組み創りを行いましたが、多くの協力団体※の支援があり、そして現場で受け止めてくださった先生方や支援者の皆様、保護者の方々の理解があって、団体それぞれのストーリーが実現しました。この場をお借りして、御礼申し上げます。

※協力団体
「Minecraftカップ2019全国大会」は、ネットワークと端末提供の株式会社NTTドコモ社、特別支援拠点への端末提供を下さった公益社団法人リース事業協会、入賞者にMinecraft公式グッズを提供下さったインフォレンズ株式会社、子供たちのスキル変化の効果測定にプロボノで参加して下さっているアクセンチュア株式会社、そして、釜石イベントの企画・運営に携わって下さった特定非営利活動法人@リアスNPOサポートセンターにご支援いただきました。本大会は又、経済産業省・総務省より後援名義をいただいています。